脳科学の領域には根本的治療の見通しが未だに立たない疾患が数多く存在します。神経疾患・精神疾患の診断・治療法を開発するために、疾患の根底に有る脳神経の構造や機能を解明することが非常に重要になります。さらに、診断・治療法のイノベーションを生み出すために、疾患概念を越えた疾患横断的な共通病態の解明や、脳科学領域以外からの技術や戦略の導入が期待されます。
脳科学に関する新たな国家プロジェクトと位置づけられる本事業では、これまでに脳とこころの研究推進プログラムで築いた研究基盤や開発した技術等を最大限活用・発展させ、脳のメカニズムおよび疾患の病態メカニズム解明等を進めるとともに、数理モデルの研究基盤(デジタル脳)等も整備し、認知症をはじめとする神経疾患・精神疾患の発症および進行の抑制や回復等につながる診断・治療・創薬シーズの研究開発を推進します。研究成果の最大化を図るため、国際的なネットワークを強化するとともに、臨床と基礎の双方向性の産学共同研究を推進していきます。
本事業では、「中核拠点」、「個別重点研究課題」、「研究・実用化支援班」を事業スキームの3本柱としています。
このうち、「中核拠点」では、「個別重点研究課題」とも連携しながら研究を実施するとともに、基礎と臨床の連携、産学連携、ドライとウェットの融合などの異分野融合、研究基盤の整備・共用、研究成果の取りまとめ・情報発信(アウトリーチ)機能等を担います。
「個別重点研究課題」では、
- 革新的技術・研究基盤の整備・開発・高度化、
- ヒト高次脳機能のダイナミクス解明、
- 神経疾患・精神疾患に関するヒト病態メカニズム解明、
- デジタル空間上で再現する脳モデル開発・研究基盤(デジタル脳)の構築、
- 神経疾患・精神疾患の治療等のシーズ開発、
の5つの領域の研究を重点的に推進します。
「研究・実用化支援班」では、知財戦略の策定など研究成果を実用化に結びつけるための伴走支援や、個別重点研究課題に対する研究倫理支援や当該領域の研究開発の推進・加速に資する研究倫理面の調査研究等を行います。
以上の体制を基本として、産学官コンソーシアム、府省間連携、AMED事業の基盤利活用を充実させることで、脳のメカニズム解明等を進めるとともに、認知症をはじめとする神経疾患・精神疾患の抜本的な発症・進行の抑制や回復に向けた診断・治療法の開発に貢献していきます。
※ 本事業には、令和6年度まで実施予定の「精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト」「領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト」も含まれます。