プログラムスーパーバイザーより
髙橋 良輔
京都大学 学術研究展開センター 特定教授/生命・医薬系 部門長
2024年度から脳科学事業の国家プロジェクトとしてAMED脳神経科学統合プログラム(脳統合)が開始されました。革新脳、国際脳で蓄積されてきた脳神経科学の成果を基盤としてヒトの脳機能のさらなる理解から認知症・統合失調症のような精神・神経疾患の病態解明・治療法開発にいたるまで、幅広い脳科学研究の飛躍的発展を目指します。脳統合で新たに設けられた重点項目は計算論的脳神経科学を用いて動物・ヒトのデータの利活用に基づく「デジタル脳」を構築することです。ウェットとドライの学問領野の融合によって創造される新たな脳神経科学が社会に大きく貢献することを期待しています。
プログラムオフィサーより
浅井 潔
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
現在はRNAの配列・構造の情報解析とAI技術を活用した核酸配列設計に取り組んでいますが、バイオインフォマティクスにおけるデータベースと解析ツールの連携の重要性を訴えてきました。データベース開発とデジタル脳構築は、脳統合プログラムにおける統合プラットフォームで中核をなす重要課題であると思います。脳データ統合プラットフォームの開発と活用が成功するように、プログラムオフィサーとして努力していきたいと思っております。
大隅 典子
東北大学 副学長、大学院医学系研究科 教授
少子高齢化が進行する中、増加の一途をたどるこころの健康は大きな社会問題となりつつあります。新たに立ち上がったAMED脳統合プログラムは、広い脳科学の研究全体をカバーしつつ、とくに進展の著しいイメージングや網羅的な解析、人工知能の利用を踏まえ、「デジタル脳」を整備することが想定されています。中核拠点を軸に、領域1〜5までの多様な脳科学研究者が交流・連携することにより、我が国の脳科学研究がさらに発展するようプログラムオフィサーとして期待しています。
大塚 稔久
山梨大学 大学院総合研究部 医学域基礎医学系 生化学講座第一教室 教授
世界各国の大型脳研究プロジェクトがそれぞれの強みを活かしながらさらなる発展を目指す中で、我が国においてもデジタル脳に着目した脳統合プログラムが始動しました。International Brain Initiative (IBI)とも連携しつつ、日本の強みを活かしたオールジャパン体制が求められています。プログラムオフィサーとして、本プログラムが円滑に進行するよう指導・助言を行い、国民の脳科学研究に対する期待に応える責務を果たす所存です。皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
狩野 方伸
帝京大学先端総合研究機構 特任教授/東京大学 名誉教授
私は、「脳統合プログラム」において、領域2「ヒト 高次脳機能のダイナミクス解明」のPOを担当しております。この領域は、ヒトの高次脳機能(認知、記憶や学習、情動、意思決定・意思、社会性や他者理解、創造性等)の理解に向け、モデル動物等も活用し、分子・細胞・ 神経 回路等の階層ごとに、さらには、各階層を結び付けることにより、高次脳機能を発揮するダイナミクスの根本的解明を目指しています。世界トップレベルの基礎研究を通じて、精神・神経疾患の病態メカニズムの理解へとつながることを期待しております。
神庭 重信
九州大学 名誉教授
精神・神経疾患は脳という複雑極まる臓器を舞台として起こります。その解明は容易ではなく、多くの疾患の病態はいまだ不明瞭で、治療薬の有効性も満足できるものではありません。したがって、基礎と臨床の連携、アカデミアと産業界との連携、および国際的なネットワークの強化とともに数理モデルの研究基盤(デジタル脳)等、総力を挙げて研究を遂行していく必要があります。本プログラムはこのような理解のもとで企画されたものであり、精神・神経疾患の診断・治療・創薬シーズにおいて飛躍的な成果が生まれることを願っています。
塚原 克平
エーザイ株式会社 上席執行役員 筑波研究所長
認知症をはじめとする脳神経疾患に対する創薬は極めて難易度が高く、未だ成功確率の低い領域です。脳統合プログラムを通じて、疾患の正しい理解と再定義、ヒューマンエビデンスに裏打ちされた新たな仮説の構築と検証、適切な標的分子とバイオマーカーの同定ならびに創薬シーズ開発を着実に進め、デジタル脳も活用しながら、確度の高い新薬創出や新たな診断法の開発につなげることを目指します。長年創薬研究に携わってきた経験を活かし、我が国発の革新的なアイデアを育てていくことに貢献できるよう努めて参ります。
萩原 一平
一般社団法人応用脳科学コンソーシアム 理事・事務局長/株式会社NTTデータ経営研究所 フェロー
脳神経科学研究は医療・ヘルスケア、さらにAIなどの分野を中心にその推進の重要性が急速に高まっています。一方、日本には優秀な研究者が大勢いますが、科学を技術に進化させ社会実装するフェーズは必ずしも強いとは言えないのではないでしょうか。科学は技術と一体化して社会的価値を大きく高めることができます。「脳統合プログラム」では、微力ではございますが、プログラムオフィサーとして、産学官連携、知財・実用化戦略、ELSIなどを中心に少しでも貢献できるように取組む所存です。
松田 哲也
玉川大学脳科学研究所 教授
脳統合プログラムは、脳疾患の克服を目指して、日本の研究者の総力を結集して取り組むプログラムです。基礎研究と臨床研究が連携し、日本の研究の強みとリソースを最大限活かし、プログラムを推進することで、大きな成果が生まれると思っております。私は、本プログラムの目標へ向けて、関係する研究者が一体となって研究が推進されるように指導・助言等を行い、国民の皆様の脳科学研究への期待に応えられるように、プログラムスーパーバイザーの指示のもと、その責務を果たしていく所存でございます。皆様のご理解とご支援の程、よろしくお願いいたします。