臨床トランスレーション

グループ長

岩坪 威
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 所長
新規標的の同定や高精度診断法の開発を通じて、治療法の実用化を促進し、脳科学と医療の連携と創薬の可能性を生み出します。

分担課題

5A
アルツハイマー病病因タンパク質の凝集制御・臨床連携
岩坪 威
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 所長
認知症の主な原因を占めるアルツハイマー病では、病因タンパク質の凝集・蓄積が細胞死を招くことが解明され、治療標的とされています。私たちはアミロイドβなどの病因タンパク質の凝集メカニズムを、アポE等の重要な修飾分子の役割を含めて完全に解明し、現在臨床使用の始まっている抗体療法に続き、それを超える日本発新規治療薬の創出という出口に向けて橋渡ししてゆきます。
5B
新規治療標的としての認知症病因分子クリアランス機構
山田 薫
東京大学 大学院医学系研究科 助教
認知症では、脳内で産生された病因分子に対する除去機構が低下することで病因タンパク質が蓄積、発症すると考えられます。本研究では疾患が進行する過程で生じる、クリアランス破綻に関わる分子機序を解明するとともに、認知症病因分子の排出に関わる機構を同定します。この研究で同定されたメカニズムに基づき、これまでにない新規治療標的を見出すことを目指します。
5C
神経回路修復を目指した新規認知症治療シーズ探索のための評価系構築とその活用
村松 里衣子
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 部長
認知症における脳機能の低下には、脳内の神経回路の傷害が関わると考えられています。傷ついた神経回路を再生することで脳機能の回復がもたらされると期待されていますが、そのメカニズムには不明な点が多くあります。本研究では、神経回路の再生を評価する方法を作成し、再生のメカニズムを解明します。本研究を通じて、認知機能を改善させる新規の治療標的の同定を目指します。
5D
脳病変・回路のイメージングとセラノスティクス
樋口 真人
量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究センター センター長
認知症ではアミロイドβ、タウ、αシヌクレインなどと呼ばれる各種タンパク質が、疾患ごとに特徴的なパターンで脳内に病変を形成します。このタンパク質に結合する薬剤(プローブ)を用いたポジトロン断層撮影(PET)により病変を高い感度で画像化する技術を開発し、病変と回路障害の関係を明らかにしながら、実用化に向けて有用性を実証します。さらにプローブから派生した治療薬で病変の形成を抑えることを目指します。治療(セラピー)と診断(ダイアグノスティクス)が一体となった「セラノスティクス」で、新たな切り口による認知症への介入戦略を開拓します。
5E
認知症・神経変性疾患の診断および治療の鍵となる体液バイオマーカーの確立
服部 信孝
理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経変性疾患連携研究チーム チームリーダー
これまでパーキンソン病のステージは臨床に基づいて行われてきました。我々チームは、パーキンソン病のキー分子であるα-シヌクレインのシードが血中に存在することを発見していますので、この手法をより簡便なものにして短期間で検査が出来るよう技術開発を進めます。また、他の神経変性疾患でも血中異常分子の有無で診断できるよう新技術を開発します。
5F
精神疾患・認知症性疾患の遺伝子バイオマーカー開発
髙田 篤
理化学研究所 脳神経科学研究センター 分子精神病理研究チーム チームリーダー
大規模な精神疾患・認知症性疾患罹患者と対照者のヒトゲノム配列データセットを、これまでの研究では十分に調べられていないタイプの変異を含めて詳細に解析を行なうことで、遺伝子バイオマーカーの開発を目指します。また、得られた結果に基づいた統合的バイオインフォマティクス解析を実施し、疾患の病態や治療法創出ターゲットについての知見を深めます。