グループ長
銅谷 賢治
沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット 教授
脳の解剖学や生理学などのデータを統合し、数理モデルとして再構成する「デジタル脳」の構築手法の開発を進め、デジタル脳構築ソフトウェアの公開と、脳データベースと連携してクラウド上でモデリングとシミュレーションを可能にする「脳データ統合プラットフォーム」の立ち上げを目標とします。中核機関の他グループや個別重点研究課題との連携のもとでデジタル脳構築と多様なシミュレーションを行い、強化学習やベイズ推定などの脳機構の解明、精神神経疾患の理解と介入手法の探索を進めます。
分担課題
4A
異種脳機能マップの変換統合
石井 信 / Henrik Skibbe
京都大学 情報学研究科情報学専攻 教授 / 理化学研究所 脳神経科学研究センター 脳画像解析開発ユニット ユニットリーダー
ヒト、マカクサル、マーモセット(およびマウス)にわたる複数種の脳の間で、機能回路を比較可能とする「異種脳統合プラットフォーム」の構築を進めます。拡散MRI画像、構造MRI画像の両者を用います。中核機関内で取得される脳活動データに基づき、自発活動や機能的活動を生成する機能回路構造の相同性・相違性の定量評価を行います。
4B
ヒト脳データベースの拡張発展
デジタル脳開発に必要なデータインフラ整備として、神経・精神疾患ヒト脳データベースの拡張発展を行います。種間横串検索を可能とするプラットフォームに向けて、各研究開発項目と連携し、国際脳・統合脳・IBISSなどの既存データベースと、個別重点研究課題で取得される新規データをメタデータレベルで統合するための支援を行い、種間横断検索フレームワークの開発を行います。
4C
多階層データ駆動モデル構築
脳の構造と活動、知覚や行動に関する多様なデータを統合し、脳の局所回路から全脳レベルなど様々なスケールのデジタル脳を構築するための数理手法とソフトウェアの開発を進めます。これらデジタル脳開発のソフトウェアの整備公開と、脳データベースとの連携によりモデル構築とシミュレーションをクラウド上で可能にする脳データ統合プラットフォームの立ち上げを行います。
4D
シミュレーション・データ同化による脳機能/病態の再現
げっ歯類・霊長類の脳のコネクトーム、トランスクリプトーム、電気生理学データなどの脳データを導入可能な神経回路シミュレータを開発します。開発されたシミュレータと脳データをもとに、神経回路モデル構築を行います。並列計算技術やデータ同化手法を駆使し、神経回路シミュレーションを行うことで、健常・疾患状態の神経活動の再現と検証を行います。これらの取り組みにより、脳の情報処理機構と脳疾患機序の理解を目指します。
4E
脳計算機構の解析法の開発
デジタル脳を活用し、脳が知覚・運動・学習を行う計算機構の理解を深めるための研究を行います。一般的な力学系をベイズ推論として捉えるベイズ力学の観点に基づいた解析手法を開発し、予測符号化・能動的推論・control as inference等のベイズ脳の実体を司るとされる回路構造や動態がデータからボトムアップに構築したデジタル脳の中に現れるかを検証していきます。
4F
神経・精神疾患モデリング
個別重点研究課題より集まる患者の階層的データ(侵襲的記録・刺激データ、マクロスケールの脳活動データ、行動データ、治療情報)を数理モデルで繋ぐことで神経・精神疾患のメカニズムの理解を目指します。