プレスリリース

2022.09.30

脳領域間の相互通信を一挙に観測する手法を開発! 脳の通信プロトコル解読に向けてさらなる前進

脳の異なる領域間で相互にやりとりしている神経スパイク信号を一挙に観測することを可能にするスパイクコリジョンテストの自動化・並列化に成功しました。この技術は、多チャンネル電極で多数の神経細胞のスパイク信号を同時に記録し、瞬時に処理して、複数の箇所の脳内刺激を制御するリアルタイム実験システムを構築することによって実現しました。「脳の通信プロトコル(手順)」を解読する研究を大きく前進させることが期待されます。本研究成果は「iScience」に掲載されました。

2022.09.15

多色蛍光シグナル増幅システムFT-GO法の開発に成功 ― 操作安定性が高く簡便な多色蛍光シグナル増幅システムを構築 ―

グルコースオキシダーゼによるグルコースの酸化反応とチラミドシグナル増幅法(TSA法)とを組み合わせることにより、操作安定性が高く簡便な多色蛍光シグナル増幅システムである、FT-GO (Fluorochromized Tyramide-Glucose Oxidase) 法の開発に成功しました。FT-GO法は、従来の一般的な検出法である間接法と比較して約10倍から30倍、直接法と比較して約60倍から180倍のシグナル増幅を可能にし、組織化学解析において幅広い使用が期待されます。本研究成果は「Scientific Reports」に掲載されました。

2022.09.02

神経変性疾患の原因となる異常タンパク質を生体脳で画像化することに成功 ‐異常タンパク質「αシヌクレイン」病変を捉えるPET薬剤を産学連携で創出‐

 

多系統萎縮症において、原因と考えられるタンパク質であるαシヌクレイン病変を、生体脳で明瞭に画像化することに成功しました。本研究では、製薬企業3社との連携によってαシヌクレイン病変を捉える放射性薬剤を開発し、高感度の可視化を実現しました。αシヌクレイン病変はパーキンソン病やレビー小体型認知症でも中心的な病変となることから、本技術は多様な神経難病の発症機構解明や、診断治療に大きく寄与することが期待されます。本研究結果は「Movement Disorders」に掲載されました。

2022.09.01

パーキンソン病の認知機能障害は鼻からはじまる?―レヴィ小体病における嗅覚系伝播経路の解明―

パーキンソン病やレヴィ小体型認知症を含むレヴィ小体病ではαシヌクレインが脳内を伝播することで病態が進展すると考えられています。マーモセットの嗅球へαシヌクレインの凝集体を接種することで、レヴィ小体病における嗅覚系伝播経路を再現し、陽電子断層撮影(PET)画像を用いて脳機能が低下することを示しました。本研究成果は「Movement Disorders」に掲載されました。

2022.08.31

脳内異常タンパク質の画像から多様な認知症のタイプを自動で判別‐疾患の自動診断に向けてAIを活用した新技術を創出‐

多様な認知症で脳内に蓄積する異常なタウタンパク質(タウ病変)の陽電子断層撮影(PET)画像を人工知能(AI)で解析し、タウ病変の蓄積パターンを自動で評価できる基幹技術を開発しました。タウ病変の蓄積パターンから、代表的認知症である「アルツハイマー病らしさ」と、運動障害を伴う認知症である「進行性核上性麻痺らしさ」の判別に役立つスコアを算出できるようにAIを訓練し、そのスコアによってこれらの認知症が高い精度で識別できるだけでなく、スコアの高さは疾患の重症度の尺度としても有用であることを示しました。本研究成果は「Movement Disorders」に掲載されました。

2022.08.10

大脳神経回路形成の新戦略――大脳皮質の多数の領野を結ぶ結合を効率よく作るた めの並列モジュール戦略を解明

本研究では、世界で初めてマウス大脳視覚野と視床核を含む領野間結合がどのように形成されるのかを網羅的に調べ、多数の領野間結合を含む複雑な脳神経ネットワークを効率的に形成するための新たなメカニズムを明らかにしました。本研究の成果は、将来的に先天性盲などの疾患に対する治療法や、優れた人工知能を形成するための回路形成アルゴリズムに応用されることが期待されます。本研究成果は「Nature」オンライン版(8月3日付)に掲載されました。

2022.08.03

日本人最大規模の自閉スペクトラム症患者を対象とした全ゲノム解析により、神経細胞シナプス機能の病態への関与を証明

自閉スペクトラム症(ASD)の発症には、遺伝要因の関与が示唆されていますが、その解明は未だ不十分でした。本研究では、日本人ASDを対象としたエクソーム(全ての遺伝子のタンパク質コード領域のゲノム配列を解読する)研究としては最大規模の合計約600名のゲノムサンプルを解析した結果、シナプス機能に関与する遺伝子セットが健常者よりもASD患者で統計学的に優位に多く存在することを示しました。特にシナプス機能に関与するABCA13がASD病態に関与する強いエビデンスが得られ、本研究からASD病態解明へのヒントが示されました。本研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されました。

2022.08.01

自閉症小児が周囲の人を見ないことが、社会脳の発達を障害する可能性を示唆---早期行動療法の開発に有用か---

自閉症の早期介入の長期予後への重要性は認識されていますが、その標準的な治療法は未だありません。本研究では自閉症モデルマーモセットが、小児期に大人のマーモセットを見ている時間と、成長後の自閉症様症状の間に強い相関があることを見いだしました。本研究では、高次社会性テスト(不公平認知、互恵性認知)や習慣への固執テストなど霊長類特異的自閉症症状テストを用いて、幼少期の他者への社会的注意が自閉症の早期治療の対象となる可能性を示すとともに、自閉症モデルマーモセットが自閉症早期治療法開発に有用であることを示しました。本研究成果は「Frontiers in Psychiatry」に掲載されました。

2022.07.20

治療薬開発に適したアルツハイマー病モデルマウスの開発―βセクレターゼ阻害薬の開発に貢献―

本研究では、ゲノム編集を利用し新しいアルツハイマー病(AD)モデルマウスを作製しました。このモデルでは、ADに特徴的なアミロイド病理やそれに付随する神経炎症が再現されており、さらにADの治療薬候補の一つであるβセクレターゼ阻害薬の効果を正確に評価できます。また、脳の神経細胞でADに特徴的なエンドソーム異常が起きており、ADの細胞病態解明にも応用可能です。本研究成果は「Science Advances」に掲載されました。

2022.07.11

学習・記憶を制御するアセチルコリンの神経細胞内シグナル伝達機構を解明―アルツハイマー型認知症の新治療法の開発に期待―

アセチルコリンは学習に重要であり、その欠損はアルツハイマー型認知症と関わっています。本研究では、忌避学習に至るアセチルコリンの神経細胞内におけるシグナル伝達経路を解明しました。認知症治療薬ドネペジルもこの経路を介して忌避学習を亢進することを示しました。忌避学習は、動物実験におけるアルツハイマー型認知症治療薬のスクリーニングの評価指標として使われています。本研究の成果が、アセチルコリンのシグナル経路を標的としたアルツハイマー型認知症の新しい治療法の開発に繋がることが期待されます。本研究成果は「Molecular Psychiatry」に掲載されました。

2022.07.08

光照射とfMRIでサルの脳内ネットワークを明らかに―霊長類におけるオプトfMRI技術に進展―

脳全体の活動を同時に計測する機能的磁気共鳴画像法(fMRI)とオプトジェネティクスとを組み合わせたオプトfMRI技術はネズミの研究で活用が進んでいるものの、霊長類に対しては困難とされ、この10年間成功例が報告されていませんでした。本研究では、効率的なオプトジェネティクスと超高磁場7テスラMRIとを組み合わせ、サルの大脳皮質運動野を光で活性化したときの脳全体の活動を可視化することに成功しました。本研究成果は「Cerebral Cortex Communications」に掲載されました。

2022.06.28

双極性障害・統合失調症・自閉スペクトラム症の発症に関与する、ゲノムコピー数変異(CNV)の共通性と特異性を同定

双極性障害(BD)、統合失調症(SCZ)、自閉スペクトラム症(ASD)のゲノムコピー数変異(CNV)解析から、BDでは小規模な欠失が多く、SCZ・ASDでは大規模CNVが多くみられました。神経発達症と関連する既知のリスクCNVは、3疾患の発症に関連しましたが、BDリスクに対する影響度は相対的に小さいものでした。BDではクロマチン機能の関与が示唆され、SCZ・ASDではより広範でオーバーラップする分子メカニズムの関与が示唆されました。ノンコーディング領域のCNVは、SCZ・ASDの発症に関与することが示唆されました。本成果は「Biological Psychiatry」に掲載されました。

2022.05.06

滑らかな運動はどう実現されるのか―大脳基底核の視床下核が運動を制御するメカニズム―

神経活動を可逆的に操作する化学遺伝学をニホンザルに用いて、視床下核の活動を抑制したところ、不随意運動が起き目標に手を伸ばす運動が不安定になりました。視床下核の抑制前後で、大脳基底核の出力部である淡蒼球内節の神経活動を計測・比較したところ、神経活動の大きさはあまり変化しませんでしたが、発火パターンの変動は増大しました。さらに、この発火の変動は特に運動時間が長い試行では大きく、不随意運動の直前に神経活動が変動していました。これらの結果は、視床下核が大脳基底核の出力を安定化させることで、滑らかな運動を実現していることを示しています。本研究結果は「Nature Communications」に掲載されました。

2022.05.06

パーキンソン病の新たな治療法を開発―運動皮質の神経活動に基づき脳深部刺激療法の刺激方法をコントロールする―

進行期のパーキンソン病に対して、視床下核に電極を挿入して連続的に電気刺激を加える脳深部刺激療法(DBS)が有効ですが、刺激への慣れによる効果の減弱や、早い電池消費などの問題がありました。パーキンソン病モデルサルを用いて、運動開始に関連する運動皮質の脳波をもとにDBSの刺激強度と頻度をコントロールするようにしたところ、従来の連続型DBS型と同程度、場合によってはより治療効果があり、消費電力も約2/3に減少することがわかりました。運動皮質の信号に基づき刺激パラメータをコントロールする適応型DBSの有効性が示されました。本研究結果は「Scientific Reports」に掲載されました。

2022.03.24

ストレスによって不安が生じる新しい神経メカニズムを発見―脳とココロのしくみの解明に期待―

ストレスを負荷した脳にある全ての神経細胞の活性化を機械学習によって解析し、ストレス脳では前障という脳領域の活性化が最も特徴的であることを見出しました。また、ストレスに応答して活性化する前障の細胞集団だけを人工的に活性化させると不安様行動が生じること、逆に抑制するとストレス後の不安様行動が抑制されることを見出しました。さらに、ストレスを繰り返して受けるときに前障の神経活動を抑制すると、その後のうつ様行動の発現も抑えられることが明らかになりました。本成果は「Science Advances」に掲載されました。

2022.03.08

認知症の病因「タウタンパク質」が脳から除去されるメカニズムを解明―脳内のグリアリンパ系がタウを押し流すことを発見―

脳内の老廃物を除去するグリアリンパ系によって、アルツハイマー病の原因となるタウタンパク質が脳内から脳脊髄液に移動し、その後、頚部のリンパ節を通って脳の外へ除去されていること、またこの過程にアクアポリン4が関与していることを明らかにしました。さらにアクアポリン4を欠損し、脳からのタウの除去が低下しているマウスでは、神経細胞内のタウ蓄積が増加し、神経細胞死も助長されることを見出しました。本研究成果は「Journal of Experimental Medicine」に掲載されました。

2022.02.21

脳の神経活動を可視化する新規マウス系統を開発―高感度・高速カルシウムセンサーによる神経活動の計測に成功―

より正確な神経活動計測を実現するため、高感度・高速緑色カルシウムセンサー(G-CaMP9a)、ならびにG-CaMP9aを細胞種特異的に発現誘導可能なトランスジェニックマウスの開発に成功しました。作製したマウスは、カルシウムセンサーの発現レベルが安定して均一なため、複雑な高次脳機能を解明するための有用なリソースとなることが期待されます。本研究成果は「Cell Reports Methods」に掲載されました。

2022.01.13

全脳からシナプススケールにズームインするイメージング技術の開発に成功―組織透明化技術と電子顕微鏡技術の融合によりシームレスな観察を実現―

全脳からシナプスまで神経回路構造をズームインしながら観察する技術の開発に成功しました。神経伝達を担う神経線維は小動物でも数cmに及び、その構造解析には光学顕微鏡による観察が適しています。一方、神経結合のエッセンスであるシナプスはnmスケールの構造であり、その観察には電子顕微鏡が必要となります。本研究は、組織透明化技術と電子顕微鏡観察との融合により、全脳からシナプスまでのシームレスな観察を実現し、大規模神経回路の構造解析に貢献します。本研究成果は「iScience」オンライン版(12月27日付)に掲載されました。

2021.11.18

小脳の大規模可視化に成功 -マウス小脳における感覚情報表現の仕組みを解明-

本研究では、蛍光カルシウムセンサーyellow cameleonと、超広域マクロ顕微鏡を組み合わせることで、小脳皮質の背側全域を計測可能な実験システムの開発に成功しました。このシステムを用いて2万個以上のプルキンエ細胞の複雑スパイクの発火を測定し、「セグメント」と呼ばれる小区域の活動パターンの組み合わせが全体として身体のさまざまな部位への感覚入力の確率をリアルタイムで表現する、分散型の集団符号化を行っていることを明らかにしました。本研究成果は「Cell Reports」に掲載されました。

2021.11.15

アルツハイマー病の新しい治療標的を発見-悪性因子アミロイドβペプチドの分解を促進-

本研究では、アルツハイマー病(AD)の初期病因因子アミロイドβ(Aβ)の脳内分解酵素ネプリライシンの新しい活性制御メカニズムを発見しました。また、そのメカニズムに基づき、高インスリン血性低血糖症の治療薬として使用されているジアゾキシドをADモデルマウスに投与すると、Aβ病理および認知機能が改善されたことから、同薬剤がドラッグリポジショニングとして有用であることが示唆されました。本研究成果は、ネプリライシンを主軸としたADの新たな予防・治療法の開発に貢献すると期待できます。本研究は、「Molecular Psychiatry」オンライン版(11月4日付)に掲載されました。

2021.10.18

脳病態における回路の活動異常や病因タンパク質の蓄積が始まる過程の画像化に成功―認知症の理解と創薬への応用に期待―

本研究では、生体脳で神経細胞に脳内レポーターと呼ばれる目印タンパク質を発現させ、神経回路の構造や活動異常をポジトロン断層撮像法(PET)で画像化する技術を開発しました。また、同レポーターを認知症の病因となるタウタンパク質とつなぎ合わせることで、タウが回路に異常蓄積する最初期の過程を生体イメージングする事も可能となり、病態解明や治療薬の評価につながると期待されます。本研究成果は、「EMBO Journal」のオンライン版に掲載されました。

2021.09.17

世界初 自閉スペクトラム症モデルマーモセットの開発に成功 -治療薬開発のイノベーションに期待-

本研究では、母親にバルプロ酸を投与して自閉症モデルマーモセットを作成しました。本自閉症モデルはヒト孤発性自閉症の遺伝子発現異常をよく再現していました。つまり、神経細胞やオリゴデンドロサイトに関連する遺伝子が減少し、ミクログリアやアストロサイトに関連する遺伝子が増加していました。しかし、現在の主要なげっ歯類モデルでは、4つの細胞種のうち、多くても2つの細胞種でしかヒトの自閉症を再現していませんでした。霊長類の自閉症モデルは、げっ歯類モデルよりもヒトの自閉症を再現すると予測されてきましたが、トランスクリプトームを比較するという客観的な手法でこれが示されたのは今回が初めてです。本研究結果は「Nature Communications」に掲載されました。

2021.08.31

第三世代アルツハイマー病モデルマウスの作製―アミロイドを標的とした新しい治療法の開発に向けて―

本研究では、アルツハイマー病(AD)患者により近い脳病理を早期から呈する新しいADモデルマウスの作製に成功しました。この新規ADモデルマウスを利用し、AD患者の脳でアミロイドβ(Aβ)ペプチドが蓄積するアミロイド病理の機序がより詳しく解明されることで、Aβペプチドを標的とした新しい治療法の開発に貢献するものと期待できます。本研究成果は「Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。

2021.07.26

パーキンソン病の症状を引き起こす神経メカニズムを解明

ヒトに近い霊長類であるニホンザルのパーキンソン病モデルを用いて、症状を引き起こす神経メカニズムを明らかにしました。これまでは神経活動の増加や活動パターンの異常によって症状が説明されてきましたが、今回の結果は定説とは異なり、大脳基底核の神経経路のうち「直接路」を通る運動情報の伝達が弱まっていることが、より本質的な変化であることを示しました。また「直接路」を通る情報伝達を回復してやれば症状が軽くなることも示し、パーキンソン病の新たな治療法の開発にもつながると期待できます。本研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載されました。

2021.05.18

脳全体に広がる聴覚応答の新たなネットワークを発見

難治性てんかんの手術治療におけるてんかん発生源の診断目的に留置された頭蓋内電極記録により、聴覚ガンマオシレーションが、前頭葉や頭頂葉にまで広がる脳全体の複雑なネットワークから発生することを明らかにしました。この結果は、統合失調症などの精神疾患で低下している聴覚ガンマオシレーションの発生メカニズムの理解につながり、将来の診断や治療の開発に役立つことが期待されます。本研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載されました。

2021.04.27

マーモセットの遺伝子発現データベースを公開―新しい脳神経科学モデル動物として期待―

コモンマーモセットの脳内で、発達障害や精神疾患にかかわるとされる遺伝子の網羅的な発現解析によってこれらの遺伝子が特定の脳領域に限局した形で発現していることを明らかにしました。また世界中の研究室で一番利用されているモデル動物であるマウスとヒト脳の発現パターンの比較から、マーモセットとヒトでは多くの共通する発現パターンが存在することを明らかにしました。本研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に掲載されました。

2021.04.20

双極性障害患者神経細胞におけるDNAメチル化変化とその特性を解明

本研究では、双極性障害患者前頭葉試料を用い、神経細胞核分画を行った上で網羅的なDNAメチル化解析を行いました。その結果、患者では多くの遺伝子が低メチル化状態にある一方、精神・神経機能に重要な遺伝子は高メチル化されていることを明らかにしました。DNAメチル化状態に変化のあった領域は、双極性障害との遺伝学的関連が報告されているゲノム領域に有意に集積しており、遺伝要因との関連が認められました。本研究成果は「Molecular Psychiatry」に掲載されました。

2021.04.20

脳の宇宙を捉える顕微鏡―世界初、多領域にまたがる神経ネットワークのエコ特性を発見―

本研究では、広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす世界初の2光子顕微鏡を開発しました。従来の顕微鏡では、観察視野が狭い、または視野は広くても、空間解像度が低いか、神経活動の記録速度が低速でした。そのため、多領域にまたがる細胞レベルでの広域ネットワークの機能的構造は不明でした。マウス大脳皮質から1万6000個以上の神経細胞の活動を、9mm²(従来の36倍)の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功しました。観測したデータを用いて細胞レベルでのネットワーク解析を行った結果、大脳皮質はスモールワールド性を持つことを世界に先駆けて発見しました。本研究成果は、「Neuron」に掲載されました。

2021.04.14

汎化能力を最大化する特徴抽出―信頼性・説明可能性の高いデータ予測―

本研究では、将来の入力を予測するために最も有益な成分を抽出する教師なし学習手法「PredPCA(予測主成分分析)」を開発しました。予測不可能なノイズを除去しつつ、解が一意に定まるような最適化方法によって、テスト予測誤差を最小化できます。例えば、動画から予測の汎化に重要な隠れた特徴を抽出することが可能です。自動運転や医療診断など、解の一意性や精度保証が重要な状況における予測の信頼性の保証に役立つと期待できます。本研究成果は、「Nature Machine Intelligence」に掲載されました。

2021.04.06

パーキンソン病モデルへのペランパネルの有効性―パーキンソン病の進行抑制治療への期待―

パーキンソン病では、αシヌクレインという蛋白質が神経細胞に異常に蓄積・凝集し、それが神経細胞の間を伝播することで病状を進行させると考えられています。本研究では、αシヌクレインフィブリルを投与した培養細胞とマウスを用いた実験により、抗てんかん薬の一種である「ペランパネル」が、マクロピノサイトーシスによるαシヌクレインフィブリルの細胞内への取り込みと、引き続いて起きる細胞内αシヌクレイン凝集体形成を抑制することを見出しました。本研究成果は、「Movement Disorders」に掲載されました。

2021.04.05

さまざまな動物種からiPS細胞を作出する方法の確立-幹細胞を用いた細胞工学の基盤となる重要なリソース-

本研究では、さまざまな哺乳動物の皮膚の細胞を用いて、最適化された遺伝子セット・培養条件によって人工多能性幹細胞を樹立する新しい方法を確立しました。この方法で樹立されたiPS細胞はリプログラミングに用いた外来遺伝子の”完全に抜けた”細胞である事が解析によって明らかとなり、さまざまな動物モデルを用いた細胞工学において基盤となる重要なリソースである事が分かりました。本研究成果は、「Stem Cell Reports」に掲載されました。

2021.03.18

抑制性ニューロンだけに外来遺伝子を発現させる手法を開発 -抑制性ニューロンが関与する精神神経疾患の研究を加速-

本研究では、脳の抑制性ニューロンだけに外来遺伝子を発現させる手法を開発しました。血液脳関門透過型のアデノ随伴ウイルスベクターに本手法を適用することによって、静脈投与のみで、マウス全脳域の抑制性ニューロン選択的に外来遺伝子の発現が可能になります。本研究成果は、「Molecular Brain」に掲載されました。

2020.12.24

拡散MRI神経線維追跡手法の神経トレーサーデータに基づく最適化と検証

本研究では、革新脳によるマーモセット脳の拡散MRIと神経トレーサーのデータを活用して、全脳の神経結合(コネクトーム)の推定に用いられるアルゴリズムのパラメタの最適化を行いました。その結果より長距離の神経結合の追跡が可能になるとともに、コネクトーム研究でのパラメタ選択の課題が明らかになりました。本研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されました。

2020.12.24

iPS細胞を用いて22q11.2欠失症候群で生じる精神・神経疾患の脳内分子病態を解明

22q11.2欠失症候群患者は、生涯にわたり多様な精神・神経疾患の発症リスクを抱え続けます。本研究では、iPS細胞を用いた解析から、本症候群の脳内分子病態として、「ドパミン神経細胞におけるPRKR-Like Endoplasmic Reticulum Kinase依存的な脆弱性」を見出しました。本研究成果は、「EBioMedicine」に掲載されました。

2020.09.17

統合失調症の治療抵抗性の症状に関与する分子・神経回路メカニズムを発見―統合失調症関連遺伝子SETD1Aの新たな機能の解明―

本研究では、統合失調症のリスク遺伝子であるSETD1Aの変異を導入したマウスが、ヒトの統合失調症の症状に似た様々な行動異常を呈することを示しました。内側前頭前野において、シナプス後部のSetd1aがヒストン修飾を介して多様なシナプス関連遺伝子の発現を制御し、興奮性シナプス伝達を強めていることを解明しました。本研究成果は、「Cell Reports」に掲載されました。

2020.09.04

運動機能制御に関わる大脳基底核の新しい神経回路モデルを発見―直接路と間接路、2つの経路の相互作用―

本研究では、大脳基底核の直接路と間接路を異なる蛍光タンパク質で同時に標識するウイルスベクターの開発に成功しました。標識した軸索を解析した結果、大脳基底核の中継核である淡蒼球外節において、直接路と間接路が2つの軸索塊を形成し、間接路が支配する領域の中に限局して直接路が投射していることを発見しました。本研究成果は、「iScience」に掲載されました。

2020.09.03

アデノ随伴ウイルスベクターを迅速に作製する手法を開発 -遺伝子治療研究/脳神経科学を加速-

本研究では、血液脳関門透過型のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであるAAV-PHP.eBを迅速かつ簡便に作製する手法を開発しました。このことにより、AAVベクターの研究開発や、脳神経科学の基礎研究を、大きく加速させる効果が期待されます。本研究成果は、「Journal of Neuroscience Methods」に掲載されました。

2020.08.21

「脳画像データの機械学習による統合失調症、発達障害の判別手法」を開発

本研究では、複数の精神疾患を分類する脳MRI画像の機械学習器を開発しました。これに統合失調症の異なる臨床病期(精神病ハイリスク、初回エピソード精神病)の脳画像データを当てはめると、統合失調症、健常対照どちらかに判別され、発達障害と判別されることはありませんでした。そのため、本研究による機械学習器は、臨床現場で必要とされる、鑑別診断や治療予測などのマーカーとしての応用が期待されます。本研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されました。

2020.08.13

認知症の一群(FTLD類縁疾患)に共通の発症メカニズムを発見

本研究では、広義FTLD疾患スペクトラム(FTLD、ALS、CBD、PSP)の神経細胞においてFUSとSFPQの核内での会合異常と、これらが制御するタウアイソフォームのバランス異常を見出しました。こうした変化はアルツハイマー病やピック病では存在せず、広義FTLD疾患スペクトラム共通の病態であることが示唆されました。本研究成果は、「Brain」に掲載されました。

2020.07.21

ヒト特異的な遺伝子を霊長類コモンマーモセットに発現させると、脳が拡大して脳のシワが作られた―ヒト大脳新皮質の進化過程を解き明かす―

本研究では、ヒトにしか存在しない遺伝子であるARHGAP11Bを発現する非ヒト霊長類コモンマーモセットを作製しました。ARHGAP11B遺伝子導入マーモセットの胎生後期の脳を解析したところ、大脳新皮質が拡大・肥厚し、脳回脳溝構造が、本来はない領域に形成されました。これは、神経前駆細胞の一種であるbRG細胞の増加に起因していることが分かりました。ARHGAP11Bによってもたらされた大脳新皮質の拡大は、進化の過程で起きたヒトの脳の構造的な変化に関連していると考えられます。本研究成果は「Science」に掲載されました。

2020.07.20

統合失調症や双極性障害の男性患者ではセロトニン関連遺伝子のDNAメチル化状態が変化

本研究では、統合失調症および双極性障害患者末梢血においてセロトニントランスポーター遺伝子の高メチル化を同定しました。高メチル化状態は男性患者で顕著であり、偏桃体体積と逆相関を示すことを明らかにしました。精神疾患の分子病態の理解と将来的な治療診断薬の開発に貢献すると考えられます。本研究成果は「Schizophrenia Bulletin」に掲載されました。

2020.07.14

新しい脳内情報伝達様式を発見―病態の発症・治療への手掛かりに―

意欲行動の開始時には島皮質から線条体へ投射する神経の活動が下がります。にも拘わらず、受け手の線条体神経の活動は上がります。研究グループは、パルブアルブミン陽性の線条体介在神経が、上流の活動を逆転させて下流を興奮させるフィードフォワード脱抑制を仲介する責任細胞であることを明らかにしました。本研究成果は「Cell Reports」に掲載されました。

2020.05.28

ミトコンドリアのマイトファジーを可視化する蛍光技術―パーキンソン病の診断と治療に貢献―

本研究では、リソソーム環境に耐性の蛍光タンパク質「TOLLES」を作製し、それを元にマイトファジーを定量的に可視化する蛍光センサー「mito-SRAI」を開発しました。mito-SRAIを用いて、パーキンソン病モデルマウス中脳のドーパミン神経において、マイトファジー不全と細胞死が相関することを示しました。さらに、76,000種の化合物の中からパーキンソン病治療薬の候補を見いだしました。本研究成果は「Cell」に掲載されました。

2020.05.15

3次元組織学による全臓器・全身の観察技術を確立―組織の物理化学的性質に基づき理想的なプロトコルを設計―

研究者らは、生体組織の物理化学的物性を詳細に調べ、「電解質ゲル」の一種であることを明らかにしました。この物性を元に組織3次元染色の必須条件を探索するスクリーニング系を構築し、理想的な3次元染色プロトコルをデザインしました。CUBIC-HistoVIsionと命名した新規の3次元染色・イメージング法は、マウスの全脳、マーモセットの半脳、ヒト脳組織ブロック等を均一に染色し、3次元的な全臓器組織観察を可能にしました。本研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。

2020.04.24

アルツハイマー病発症の初期過程に関わる新規分子CIB1の同定

アルツハイマー病(AD)発症過程では、まずアミロイドβペプチド(Aβ)が蓄積し、続いてタウの蓄積を引き起こして神経変性に至ります。本研究では、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて、AD発症最初期過程であるAβ産生の新規制御分子CIB1を同定しました。また初期AD患者脳でのCIB1発現変動を見出し、AD発症におけるCIB1の寄与を明らかにしました。新たなAD治療戦略の提示に繋がることが期待されます。本研究成果は「The FASEB Journal」に掲載されました。

2020.03.30

ライソゾーム病の原因遺伝子がパーキンソン病の発症に関わることを発見―ライソゾーム関連蛋白を標的とした新規治療法への可能性―

本研究では、ライソゾーム病の原因遺伝子であるプロサポシンのサポシンD領域の遺伝子変異・遺伝子多型がパーキンソン病の発症に関わっていることを発見しました。患者由来のiPS細胞から分化させたドパミン神経細胞では、パーキンソン病に特徴的なタンパク質であるαーシヌクレインの蓄積・凝集がみられました。また、患者と同じ遺伝子変異を持つマウスでは、パーキンソン病によく似た運動障害の症状を示しました。パーキンソン病の病態解明や新規治療法、新薬の開発に役立ち、疾患克服に向けて大きな一歩になる可能性があります。本研究成果は「Brain」に掲載されました。

2020.03.09

自閉スペクトラム症患者に生じている遺伝子突然変異が脳の発達や社会性に異常をもたらす分子メカニズムを解明―自閉スペクトラム症の治療戦略の開発に期待―

自閉スペクトラム症(自閉症)は、胎児期の脳発達の異常によって発症すると考えられていますが、発症のメカニズムは未だほとんど不明であり、根本的な治療法は存在しません。本研究では、POGZ遺伝子に突然変異を持つ自閉症患者由来のiPS細胞を樹立し、また患者と同じ変異を導入したヒト型疾患モデルマウスを独自に作製し、POGZ遺伝子の突然変異が自閉症の病態と関連することを発見しました。今後、POGZが制御する神経機能を標的とした創薬研究により、自閉症の新たな治療戦略の開発に発展することが期待されます。本研究成果は、「Nature communications」に掲載されました。

2020.02.21

統合失調症における脳予測性の障害メカニズムの一端を解明

統合失調症の患者ではミスマッチ陰性電位が低下していることが知られています。本研究では、統合失調症におけるミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性に関連する成分の障害に由来することを明らかにしました。統合失調症のメカニズム解明に役立つとともに、今後の治療法の開発に向けた研究への応用が期待されます。本研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」に掲載されました。

2020.01.23

脳機能を担うAMPA受容体をヒト生体脳で可視化

横浜市立大学学術院医学群生理学 高橋琢哉教授らの研究グループは、脳機能を担う最重要分子であるAMPA受容体を、生きているヒトの脳で可視化するポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography: PET)トレーサーの開発に成功しました。AMPA受容体は脳の働きを支える重要な分子であり、この分子をヒトの生体脳で可視化することにより、これまでブラックボックスだった精神神経疾患の病態解明やその情報を根拠にした革新的診断・治療法の開発が飛躍的に進むと期待されます。現在このPETトレーサーを用いて、てんかん診断薬の薬事承認を目指した医師主導治験を同教室が行っています。本研究成果は、「Nature Medicine」に掲載されました。

2020.01.20

第3回日本医療研究開発大賞:村山正宜チームリーダーがAMED理事長賞を受賞

革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが第3回日本医療研究開発大賞 AMED理事長賞を受賞しました。

「触覚関連疾患の脳内メカニズム解明に繋がる生理的な知覚とその記憶の神経基盤解明」における顕著な研究成果・業績が認められた結果です。1月10日には首相官邸にて表彰式が行われました(表彰式の様子はこちら)。

2019.12.11

パーキンソン病前駆期の動物モデルを作製―発症予防や進行抑制に向けた治療法開発の貢献に期待―

本研究では、パーキンソン病(PD)前駆期のモデル動物の作製に成功しました。PDの原因であり異常に蓄積しているタンパク質(αシヌクレイン)を、その本来の発現部位で増加させた遺伝子改変マウスを作製したところ、嗅覚の低下や睡眠異常(レム睡眠行動障害)などのPDの前駆症状に引き続き、ドパミン神経細胞の減少を認めました。本マウスは、PDの発症予防や進行抑制を目的とした治療薬の開発のための動物モデルとして有用であり、また創薬におけるPD発症前あるいは超早期PDに対する治療の標的と分子の発見にも貢献が期待されます。本研究成果は、英国の国際学術誌「Brain」に掲載されました。

2019.12.11

複数の精神疾患に共通する大脳白質の異常を発見―統合失調症と双極性障害に共通の異常―

本研究では日本全国での多施設共同研究体制のもと、12の研究機関が連携して、4大精神疾患(統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症、うつ病)におけるMRI拡散強調画像を用いた大脳白質構造についての大規模解析を行いました。統合失調症と双極性障害における大脳白質領域の異常は似通った病態生理学的特徴をもち、自閉スペクトラム症とうつ病における異常は軽微であり健常者に近い生物学的特徴を有していることがわかりました。本研究の成果は、近年進みつつある精神疾患の客観的診断法の開発に役立つと考えられます。本研究成果は、『Molecular Psychiatry』に掲載されました。

2019.11.05

パーキンソン病の病態をモデルマウスでより正確に再現

本研究では、パーキンソン病で見られる、レビー小体の形成、黒質ドパミン神経の脱落など病理学的な特徴を再現したマウスの作製に成功し、パーキンソン病の病態にαシヌクレインの凝集体であるフィブリルの立体構造が大きく影響することを示しました。パーキンソン病の病態解明や新たな治療法の開発への応用が期待されます。本研究成果は、『Movement Disorders』に掲載されました。

2019.10.25

コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激することで腕の運動を誘発することに成功

本研究では、霊長類コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激して、腕の運動を誘発することに成功し、異なった腕の動作が別々の領域で表現されている事がわかりました。光刺激による非侵襲的な運動野の機能マッピングが可能になったことで、運動学習や運動障 害のリハビリの過程で起こる脳の運動機能の変化を長期的に計測し、解析することができるようになります。 本研究成果は、『Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America』に掲載されました。

2019.09.24

最適な感覚統合で「主体感」を定量化 -心理実験を統一的に再現する理論-

本研究では、人の「主体感」の強さや主体感に応じた時間知覚の違いを「最適な感覚情報の統合」によって説明する理論を提案しました。主体感の強弱が重要とされる法倫理の形成、主体感に影響を与える精神疾患の診断、そして人の主体感を高めることで学習の効率向上や習慣の継続を助ける次世代デバイスの設計などに貢献すると期待できます。本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

2019.08.20

患者脳の微細構造解析でパーキンソン病の新たな疾患概念を提唱

本研究では、マイクロビームX線回折という手法を用いて、パーキンソン病患者の脳内に実在するタンパク質異常凝集体であるレビー小体に対する直接的な微細構造解析を行いました。その結果、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて証明しました。

本研究成果は、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されました。

2019.06.13

アルツハイマー病の悪性化に関わるタンパク質の発見

理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経老化制御研究チームの橋本翔子基礎科学特別研究員、斉藤貴志副チームリーダー、西道隆臣チームリーダーらの研究チームは、「CAPON」というタンパク質がアルツハイマー病の悪性化に関わることを発見しました。
本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(6月3日付け)に掲載されました。

2019.06.13

複雑な脳回路動態のin vivoイメージングを可能にする多色カルシウムセンサー群XCaMPの合理的エンジニアリング

本研究では、4色の最高性能Ca2+センサー『XCaMP』を開発し、マウス脳内高頻度発火パターンの解読、海馬CA1細胞動態の非侵襲的記録、シナプス前後の発火活動の同時計測、及び3種の異なる細胞種の多重同時計測を実現しました。今後、精神・神経疾患病態における複雑な脳回路ダイナミクス破綻の解明に役立つと期待されます。

プレスリリースはこちら

2018.09.03

離れた脳領域の神経活動の大規模同時計測に成功

本研究チームは、対物レンズ下の空間に着目した新たな顕微鏡の開発を行い、最大6mm離れたマウス大脳皮質領野での単一細胞解像度を持つ神経細胞活動イメージングを可能としました。本研究成果は、複数領野の神経活動計測を簡便な機構によって実現するもので、今後幅広く脳機能研究に用いられ、分野の発展に貢献することが期待されます。

2018.08.24

目標に向けて行動選択をモニターし、更新する線条体の直接路と間接路

本研究では、最先端の生理学的・光遺伝学的実験技術を駆使して、大脳基底核の直接路は行動選択の結果報酬を得た場合にその行動を再選択し、間接路は無報酬であった場合に選択を切り替えることを発見しました。現代心理学の基礎理論「行動は報酬と懲罰によって形成される」の脳内メカニズムの解明に一歩近づく成果です。

2018.08.22

世界初・自由行動環境下における霊長類の大脳皮質深部の多細胞活動の計測に成功

研究グループは内視鏡型蛍光顕微鏡を用いて、マーモセット大脳皮質運動野の神経細胞活動を、自由行動環境下で計測することに成功しました。また、計測された個々の神経活動のパターンにもとづき、マーモセットが右側、あるいは左側のどちらに手を伸ばすか行動を予測することができました。

2018.08.16

Ser46-Phosphorylated MARCKS Is a Marker of Neurite Degeneration at the Pre-Aggregation Stage in PD/DLB Pathology

先行研究で、MARCKSのSer46リン酸化がアルツハイマー病発症前に生じる神経突 起変性に対応する病態マーカーであることを報告した。今回さらに、パーキンソ ン病・レビー小体型認知症においても同様の所見を確認し、Ser46リン酸化 MARCKSが疾患枠を超えた変性疾患の超早期共通病態マーカーであることを示した。

2018.07.30

プレスリリース Anatomical templates of the midbrain ventral tegmental area and
substantia nigra for Asian populations

腹側被蓋野(VTA)と黒質(SN)はドーパミン起始領域であり、さまざまな脳機能と関連している。本研究では、アジア人種に適したVTAとSNの解剖学的MRIテンプレートを作成し、これらを既存のテンプレートと比較した。さらにMR解剖画像と安静時脳機能画像を用いて、アジア人種テンプレートの妥当性を示した。

2018.07.19

プレスリリース 精神疾患治療法開発への応用に期待!―個々の神経細胞の動き方を対象とした新しいアプローチ法―

名古屋大学の尾崎紀夫教授、慶應義塾大学の岡野栄之教授らの研究グループは、統合失調症患者で確認されたリーリン遺伝子の変異(バリアント)が、脳の形態形成で重要とされている神経細胞の移動において、移動方向の安定性に影響することを明らかにした。当該リーリン遺伝子バリアントを起点としたiPS細胞由来神経細胞を用いた本研究成果は、精神疾患の分子病態理解や治療法開発につながると期待される。

著者:
Arioka Y, Shishido E, Kubo H, Kushima I, Yoshimi A, Kimura H, Ishizuka K, Aleksic B, Maeda T, Ishikawa M, Kuzumaki N, Okano H, Mori D, Ozaki N: Single-cell trajectory analysis of human homogenous neurons carrying a rare RELN variant. Transl Psychiatry 8 (1):129, 2018

2018.06.28

プレスリリース 統合失調症の労働状態の推定法の開発―病前からの認知機能低下の推定値による確率モデルの有用性―

統合失調症患者の病前からの認知機能低下※1の推定値が、労働状態と関連することを示した。病前からの認知機能低下の推定値などの関連する要因により、労働状態を確率的に推定する方法を提示した。労働状態の推定結果の適切なフィードバックは、統合失調症患者の社会復帰の促進に役立つと考えられる。

2018.06.08

プレスリリース 脳内タウ蓄積がアルツハイマー病患者の意欲低下を引き起こす

アルツハイマー病患者では眼窩前頭皮質に蓄積しているタウが多い患者ほど、同部位の神経細胞死や、その部位と他の脳部位を結ぶ線維の障害が重度で、意欲低下も重度であることを明らかにしました。本成果はタウの脳内蓄積を抑えることで、同疾患における認知機能障害のみならず、意欲低下の治療や予防もできる可能性を示唆するものです。

2018.05.29

プレスリリース 8Kスーパーハイビジョンカメラによって生きたマウスの脳活動を大規模に計測することに成功

研究チームは、内視鏡手術など医療分野への応用も期待されている8Kスーパーハイビジョンカメラをスピニングディスク共焦点顕微鏡と組み合わせることで、マウス大脳皮質に投射する神経細胞の軸索シナプスの活動を従来の2光子顕微鏡の25倍広い視野で2倍高速で撮影し、1mm以上離れた軸索シナプスの同期活動を計測することに成功しました。

2018.05.07

プレスリリース A spherical aberration-free microscopy system for live brain imaging

理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーとオリンパス株式会社イメージングシステムの開発チームは、深部微細構造を鮮明かつ定量的にイメージングする自動球面収差補正システムを共同開発しました。

本研究成果は、Biochemical and Biophysical Research Communications, Volume 500, Issue 2に掲載されました。

2018.04.06

プレスリリース CRMP2-binding compound, edonerpic maleate, accelerates motor function recovery from brain damage

脳卒中は深刻な麻痺を引き起こすが、リハビリテーションの薬剤介入は限られている。リハビリテーションによる回復過程は可塑的な現象であり、AMPA受容体のシナプスへの移行はその分子基盤である。我々はAMPA受容体シナプス移行を促進する化合物としてedonerpic maleateを特定した。この化合物は脳損傷後の機能回復をトレーニング依存的に劇的に促進させる。

2018.02.23

プレスリリース 脳の深部を非侵襲的に観察できる人工生物発光システムAkaBLI―霊長類動物にも適用可能、高次脳機能のリアルタイム可視化への応用―

 

理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダー(光量子工学研究領域生命光学技術研究チーム チームリーダー)と岩野智基礎科学特別研究員らの共同研究グループは、ホタルが産生する化合物(基質)とタンパク質(酵素)をベースに新規の人工生物発光システムAkaBLIを開発し、生きた動物個体深部からのシグナル検出能を飛躍的に向上させました。

本研究成果は、米国の科学雑誌『Science』(2月22日付け:日本時間2月23日)に掲載されました。

2018.01.30

プレスリリース アルツハイマー病と前頭側頭葉変性症の共通病態を発見―新たなシグナルを標的とする早期治療法の開発にむけて―

東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは、新規に作成した前頭側頭葉変性症(注1)のモデルマウスを用いて、アルツハイマー病に次ぐ認知症の原因である前頭側頭葉変性症において病態早期に生じるタウタンパク質リン酸化が、シナプス障害を通じて認知症状を引き起こしていることを明らかにしました。
本研究成果は、国際科学誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)に、2018年1月30日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表されました。

2018.01.19

プレスリリース 統合失調症における社会機能障害への大脳皮質下領域の関与を発見

東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の越山太輔大学院生、笠井清登教授、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授らの研究グループは、磁気共鳴画像法(MRI, 注3)を用いた研究により、統合失調症において、大脳皮質下領域に存在する視床の体積が健常者に比べて小さいという既知の報告を再現するとともに、統合失調症の社会機能障害に、大脳皮質下領域における神経回路のかなめである視床の体積異常が関与することを新たに見出しました。
本研究成果は、Scientific Reports(オンライン版:1月19日)に掲載されました。

2017.11.24

プレスリリース 「社会のルールの変化」に関わる脳機能ネットワークの一端を解明

玉川大学脳科学研究所の松元健二教授と蓬田幸人特別研究員らの研究グループは、人々の意識が変わることで「社会のルール」が変化することに関わる脳内ネットワークの働きを、脳機能イメージング法を用いた実験により世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、2017年11月24日(金)午後7時(日本時間)に英国の科学雑誌“Scientific Reports”に掲載されました。

2017.10.27

プレスリリース 細胞周期の間期(G1・S・G2)を3色で識別する技術の開発 -細胞周期可視化技術Fucciの多様化で再生医療などに貢献-

理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーと阪上(沢野)朝子研究員らの共同研究グループは、細胞周期をより細かく色分けする新しい蛍光プローブ「Fucci(CA)」を開発しました。本研究成果は、米国の科学雑誌「Molecular Cell」(2017年11月2日号)の掲載に先立ち、オンライン版(10月26日付:日本時間10月27日)に掲載されました。

2017.08.22

プレスリリース 統合失調症に関連する遺伝子変異を22q11.2欠失領域のRTN4R遺伝子に世界で初めて同定

名古屋大学大学院医学系研究科精神医学講座の尾崎紀夫教授、Aleksic Branko准教授、木村大樹助教らの研究グループは、大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科の山下俊英教授、同蛋白質研究所の中村春木教授らの研究グループとの共同により、統合失調症発症の最大のリスクである 22q11.2欠失領域に存在するReticulon 4 receptor(RTN4R)遺伝子内に、統合失調症病態に強い関連を示すアミノ酸配列変異(RTN4R-R292H)が存在することを、世界で初めて同定しました。
本研究成果は、英国オンライン科学雑誌「Translational Psychiatry」(2017年8月22日付の電子版)に掲載されました。

2017.08.04

プレスリリース 発達期小脳において、脳由来神経栄養因子 (BDNF) は シナプスを積極的に弱め除去する「刈り込み因子」としてはたらく

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野の秋明貞研究員と狩野方伸教授らの研究グループは、発達期の小脳において、脳由来神経栄養因子(BDNF)がシナプス刈り込みを促進することを発見しました。
本研究成果は、8月4日(金)に「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

2017.06.22

プレスリリース 脳全体を高速・精細に観察できる新技術を開発 -脳疾患の機構と創薬研究に貢献-

大阪大学大学院薬学研究科の橋本 均 教授、笠井 淳司 助教、未来戦略機構の勢力 薫 特任助教(薬学研究科招へい教員)らの研究グループは、脳の細胞や神経繊維レベルの微細な構造を識別できる分解能で、マウスや非ヒト霊長類の脳全体を高速 に観察できるイメージング装置(FAST, block-face serial microscopy tomographyと命名)を開発することに成功しました。
本研究成果は、神経科学分野において権威ある米国科学誌「Neuron」の電子版に6月21日(水)(米国東部時間12時、日本時間、翌6月22日(木) 午前1時)に掲載されました。

2017.05.23

プレスリリース 統合失調症におけるグルタミン酸系神経伝達異常の一端を解明

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の笠井清登教授、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授らの研究グループは、統合失調症を 主とする初発精神病群において、NMDA受容体機能を反映するMMNが有意に小さく、血漿グルタミン酸濃度が有意に高いことを見出しました。また、血漿グ ルタミン酸濃度が高いほどMMNが小さいという有意な相関を世界で初めて報告しました。
本研究成果は、初発精神病の一群において、NMDA受容体機能低下などのグルタミン酸系神経伝達の変化を示唆するものであり、統合失調症を主とする精神病性障害の病態解明の一助となることが期待されます。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」および日本学術振興会・科学研究費 補助金の助成により行われ、国際的な学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて日本時間5月23日(火)に掲載されました。

2017.03.01

プレスリリース 統合失調症研究に新たな視点 -マウス成熟個体において認知機能を回復させることに成功-

理化学研究所 脳科学総合研究センター行動遺伝学技術開発チームの糸原重美チームリーダー、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の林悠准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の桑原正貴教授、安田光佑大学院生らの共同研究グループは、新たな機序に基づく「統合失調症モデルマウス」の開発に成功し、このマウスの成熟個体に遺伝子治療を行うと、統合失調症に類似した症状が回復することを発見しました。
本研究は、英国の科学雑誌『Translational Psychiatry』(2月28日付け:日本時間3月1日)に掲載されました。

2017.02.02

プレスリリース 世界初!脳の領域間を伝わる信号を一挙に観測できる新手法の開発に成功!脳の通信プロトコルの解読に一歩近づく

玉川大学脳科学研究所(東京都町田市 所長:木村實)の礒村宜和(いそむらよしかず)教授を中心とした、玉川大学・福島県立医科大学・東北大学の共同研究グループは、世界で初めて脳領域間を伝わる信号を一挙に観測できる新手法の開発に成功しました。
本研究成果は、“Cerebral Cortex”(米国の神経科学分野の学術誌 オンライン版)に2017年1月31日(日本時間)に掲載されました。

2017.02.02

プレスリリース 脳内にある、やる気のスイッチを発見-意欲障害の治療法探索が可能に-

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授らは、マウスを用いた実験で意欲障害の原因部位を特定しました。
意欲障害は、認知症や脳血管障害など、多くの神経疾患で見られる病態ですが、その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外分かっていませんでした。研究グループは、大脳基底核とよばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで、意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見しました。
今後は、この意欲障害モデル動物を用いて、これまで治療法が全く分かっていなかった脳損傷後の意欲障害における治療法を探索することが可能になります。
本研究成果は、2017年2月1日にNature Communications(総合科学雑誌)に掲載されました。

2016.12.06

プレスリリース 脳内に「やる気」のスイッチ、目で見て操作-霊長類の生体脳で人工受容体を画像化する技術を確立、高次脳機能研究の飛躍的な進展に期待-

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫)放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部、国立大学法人京都大学霊長類研究所(所長 湯本貴和)、および米国国立精神衛生研究所(NIMH, Director Thomas Insel)の研究グループは、サルの脳内に発現させた人工受容体を生体で画像化する技術を世界で初めて確立するとともに、標的脳部位に人工受容体が発現 していることを確認したサルに、人工受容体に作用する薬剤を全身投与し、価値判断行動を変化させることに成功しました。
この研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。

2016.11.08

プレスリリース「ドーパミン受容体の機能に新視点」 -ドーパミン受容体D1R・D2R発現抑制の視認知学習機能への影響-

理化学研究所 脳科学総合研究センター 高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーらの研究グループは、大脳皮質の下にある線条体尾状核のドーパミン受容体D2Rを特異的に発現抑制すると視認知学習機能が低下するが、D1Rを特異的に発現抑制した場合には変化がない事を、マーモセットを用いて明らかにしました。
本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に11月2日付け(日本時間11月2日)に掲載されました。

2016.09.22

プレスリリース「ハンチントン病の新しい治療薬シーズを発見」-化合物ライブラリーの統合的スクリーニングから意外な結果

東京医科歯科大学・難治疾患研究所/神経病理学分野の岡澤 均教授(脳統合機能研究センター長)の研究グループは、ハンチントン病の化合物ライブラリーの統合的スクリーニングと、そこから得られた治療薬シーズ(ペプチド化合物)の生理作用と構造情報の解析を行い、それらの作用機序を明らかにしました。この研究成果は、国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック レポーツ)に、2016年9月22日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表されました。

2016.09.16

プレスリリース うつ病発症に関わる神経伝達機能の異常を発見-うつ病の病態解明に大きな一歩-

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部は慶應義塾大学 医学部精神・神経科学教室と共同で、うつ病患者は視床のノルアドレナリン神経伝達機能に異常が生じており、これが注意・覚醒機能の高まりと相関していることを見出しました。
本研究の成果は、米国精神医学雑誌 The American Journal of Psychiatry 2016年9月16日のOnline版に掲載されました。

2016.09.13

プレスリリース 「ハンチントン病の新しい治療戦略を開発」-第3の細胞死を標的とする神経変性疾患治療の可能性をひらく-

東京医科歯科大学・難治疾患研究所/神経病理学分野の岡澤 均教授(脳統合機能研究センター長)の研究グループは、新しい細胞死TRIADの細胞内シグナル経路の詳細を明らかにし、神経変性疾患の一つであるハンチントン病の病態下でTRIADが生じていること、TRIADを標的とすることでハンチントン病の治療が可能であることを示しました。その研究成果は、国際科学誌Human Molecular Genetics (ヒューマン モレキュラー ジェネティクス)に、2016年9月13日午前0時(英国時間)にオンライン版で発表されました。

2016.08.25

プレスリリース アルツハイマー病の新たな抗体治療に道をひらく-アミロイド凝集前の病態シグナルを治療の分子標的に-

東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは、アミロイド凝集前のアルツハイマー病態で、リン酸化の異常変動を示すタンパク質MARCKSを先行研究で同定しましたが、今回の研究では、MARCKSリン酸化の上下のシグナル経路と病態意義を明らかにし、さらにMARCKSリン酸化を誘導する細胞外分子HMGB1を標的とする、新たなアルツハイマー病の抗体治療法を開発しました。
その研究成果は、国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック レポーツ)に、2016年8月25日(英国時間)にオンライン版で発表されました。

2016.08.08

プレスリリース 「達成感」による脳内変化を明らかに-新たな学習法や、精神・神経疾患の治療法の開発につながる成果-

慶應義塾大学先導研究センターの山﨑由美子特任教授(理化学研究所象徴概念発達研究チーム客員研究員兼務)、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、理化学研究所象徴概念発達研究チームの入來篤史チームリーダーらは、霊長類のコモンマーモセット(以下、マーモセット)に道具で餌をとらせる訓練を行った後、デジタル脳構造画像解析技術(VBM)という解析方法を用いて、報酬ややる気に関わる脳部位として知られる側坐核の体積を測定したところ、難易度の高い訓練を達成するほど体積増加が起こることを発見しました。本研究成果は、2016年8月8日(英国時間)発行の科学雑誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

2016.08.08

プレスリリース パーキンソン病発症の鍵を握る「αシヌクレイン」の 生体内により近い状態での構造解析に成功 ~ パーキンソン病の根本治療の手がかりに ~

パーキンソン病発症の鍵を握る「αシヌクレイン」を生体内により近い状態で構造解析することに、大阪大学大学院医学系研究科神経内科学の望月秀樹教授らの研究グループが成功しました。
本研究成果はScientific Reportsの電子版に7月29日(金)19時(日本時間)に公開されました。

2016.07.22

プレスリリース 脳内マリファナがてんかんを抑えるしくみを解明

東京大学大学院医学系研究科の狩野方伸教授らの研究グループは脳内マリファナの一種である2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)がてんかんを抑制するメカニズムを明らかにしました。また、2-AGが複数のメカニズムを介して神経細胞への興奮性入力を低下させ、てんかんの症状であるけいれん発作や、てんかんの発症を抑制することを明らかにしました。今後、研究が進むことにより、脳内マリファナの働きを利用した新しい抗てんかん薬の開発につながる可能性があります。
この研究成果は、「Cell Reports」2016年7月21日(米国東部夏時間)オンライン版に掲載されました。

2016.07.07

プレスリリース 侵害受容と鎮痛制御においてオレキシン神経の活動が果たす役割―覚醒度によって痛みの感じ方が変化する仕組み―

名古屋大学環境医学研究所 山中章弘教授を中心とする研究グループは、視床下部において、オレキシンと呼ばれる物質を産生する神経(オレキシン神経)の活動が、痛みの制御に関わっていることを明らかにしました。
この研究成果は、平成28年7月7日(日本時間)に米国の専門誌「Scientific Reports」に掲載されますした。

2016.06.13

プレスリリース 神経損傷マーカー“神経細胞特異的酵素(NSE)”は炎症があると神経細胞ではなくグリア細胞で産生される

群馬大学医学系研究科・脳神経再生医学分野の平井宏和教授らの研究グループは、脳内で炎症が起こるとグリア細胞(アストロサイト)の中でそれまで眠っていたNeuron-specific enolase (NSE)を作る遺伝子(NSEプロモーター)が働き出しNSEが産生され、神経細胞では逆にNSEを作る遺伝子が抑えられNSEが消失すること、さらにこの変化は炎症が収まると元に戻ることを発見しました。今回の発見は、脳疾患の診断精度の向上や、細胞レベルでの病態の理解に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2016年6月13日(月)に「Scientific Reports」オンライン発表されました。

2016.06.08

プレスリリース 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明

名古屋大学大学院医学系研究科の尾崎紀夫教授らの研究グループは、東京都医学総合研究所、大阪大学、新潟大学、富山大学、藤田保健衛生大学、理化学研究所、徳島大学、Chang Gung University(台湾)の研究グループとの共同研究により、統合失調症の発症に強く関与するゲノムコピー数変異を患者全体の約9%と高い頻度で同定し、患者の臨床的特徴および病因の一端を解明しました。
本研究成果は、米国の科学雑誌『Molecular Psychiatry』(2016年5月31日付けの電子版)に掲載されました。

2016.05.17

プレスリリース 脳の神経活動の空間パターンは脳血流のパターンに写し取られる―安静時脳活動の詳細な時空間構造を神経発火と脳血流の両面から解明―

九州大学大学院医学研究院・東京大学大学院医学系研究科の大木研一教授らの研究グループは、安静時における脳活動の詳細な時空間構造、更にそれが脳血流に変換される様子を観察することに成功しました。
本研究結果は2016年5月16日(月)午後3時(米国東部時間)に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」にオンライン発表されました。

2016.05.13

プレスリリースてんかん発作時の特徴的な脳波を世界で初めて検出

大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学の貴島晴彦講師らの研究グループは、てんかんの発作時は、安静時に比べて、脳波に特定のカップリング現象が著明に現れることを世界で初めて検出しました。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版で2016年5月5日(木)18時(日本時間)に公開されました。

2016.03.22

プレスリリース 微弱な電気刺激が脳を活性化する仕組みを解明 -ノルアドレナリンを介したアストロサイトの活動が鍵-

埼玉大学院理工学研究科 中井淳一教授(兼 脳末梢科学研究センター長)は、理化学研究所 脳科学総合研究センター 神経グリア回路研究チームの毛内拡研究員、平瀬肇チームリーダーらの共同研究グループとして、経頭蓋(けいとうがい)直流電気刺激がマウス脳機能に及ぼす影響とその作用メカニズムを明らかにしました。
この研究成果は、国際科学雑誌『Nature Communications』(3月22日付)に掲載されました。

2016.03.02

プレスリリース 脳脊髄の髄鞘再生をMRIで可視化することに成功-多発性硬化症や神経再生医療に新たな「眼」-

慶應義塾大学医学部生理学教室(岡野栄之教授)、整形外科学教室(中村雅也教授)、内科学教室(神経)(鈴木則宏教授)、放射線科学教室(診断科)(陣崎雅弘教授)の合同研究チームは、MRIを用いて脳脊髄の髄鞘の再生を可視化することに成功しました。

本研究成果は、2016年3月2日(米国東部時間)に「The Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載されました。

2016.02.09

プレスリリース 代謝型グルタミン酸受容体mGluR1はシナプス刈込みを駆動して小脳神経回路を成熟させる

北海道大学大学院医学研究科・渡辺雅彦教授らの研究グループは、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1が樹状突起近位部からの平行線維シナプスを除去することで,異種入力線維のテリトリーが分離することを明らかにしました。
本研究成果は、2016年2月8日(月)出版の米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」で公開されました。

2016.01.19

プレスリリース 統合失調症の大脳皮質下領域の特徴を発見 -淡蒼球の体積に左右差がある-

大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授、東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の岡田直大大学院生、笠井清登教授らの研究グループは、統合失調症において、大脳皮質下領域に存在する大脳基底核のひとつである淡蒼球(たんそうきゅう)の体積が健常者に比べて大きいという既知の報告を再現するとともに、その健常者との差に左側優位の非対称性が存在することを、新たに見出しました。
研究成果は国際的な精神医学雑誌Molecular Psychiatryの電子版に1月19日(火)午前4時(米国東部標準時)に掲載されました。

2015.12.11

プレスリリース 新世界ザルのコモン・マーモセットで「ミラーニューロン」を世界で初めて発見

国立精神・神経医療研究センター 微細構造研究部の一戸紀孝部長、鈴木航室長らの研究グループおよび理化学研究所 脳科学総合研究センター 高次脳機能分子解析チームの共同研究により、同じ動作を自分がしても他人がしても活動する「ミラーニューロン」を、新世界ザルのコモン・マーモセット(Callithrix jacchus)の前頭葉下部から世界で初めて見出しました。本研究による、遺伝子の改変可能なマーモセットでの「ミラーニューロン」の発見は、自閉症の原因解明、診断、治療への発展的研究に大きな貢献をすると考えられます。
スイスのオンライン科学誌Frontiers in Neuroscience - Evolutionary Psychology and Neuroscience-にオンライン版で日本時間2015年12月10日15時に掲載されました。

2015.11.20

プレスリリース「霊長類の大脳皮質で多細胞活動を長期間・同時計測」

理化学研究所 脳科学総合研究センター 高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーの研究グループは、テトラサイクリン発現誘導システムと呼ばれる遺伝子発現誘導システムを用いて、蛍光カルシウムセンサー蛋白質の発現を増幅することにしました。その結果、マーモセットの大脳皮質で触覚など体の感覚情報を処理する体性感覚野で、数百個の神経細胞の活動を同時に計測することに成功しました。
国際科学雑誌『Cell Reports』への掲載に先立ち、オンライン版(11月20日付け)に掲載されました。

2015.10.06

プレスリリース 「神経伝達物質やインスリン分泌の新しい可視化法開発:分泌速度の謎を解明」

東京大学大学院医学系研究科 附属疾患生命工学センター河西教授の研究グループは蛍光寿命画像法を用いて、超高速開口放出をするシナプス前終末ではSNARE蛋白質が高率に複合化しており、これにより活性化領域が機能的に可視化され、シナプス結合の同定に利用できることを見出しました。
成果は、10月6日に(国際科学誌「Nature Communications」)電子版に掲載されました。

2015.09.15

プレスリリース 「生きた霊長類の脳内で神経細胞の「スパイン」を観察」

理化学研究所 脳科学総合研究センター 高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーの研究グループは、新世界ザルであるマーモセットの大脳皮質において、2光子顕微鏡を用いてスパインと呼ばれる神経細胞の微細形態を生体内で可視化する手法を開発しました。
成果は、米国の科学雑誌『eNeuro』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(8月27日付け:日本時間8月28日)に公開されました。

2015.09.15

プレスリリース 「アルツハイマー病の組織病変をズームイン」

理化学研究所 脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーの研究グループは、生体組織を抗体や色素で染色し微細構造を保ちながら透明化する新しい技術を確立しました。この技術を使って、アルツハイマー病モデルマウスの加齢脳やアルツハイマー病患者の死後脳におけるアミロイド斑を、異なる空間解像度で定量的に観察することが可能となりました。
国際科学雑誌『Nature Neuroscience』への掲載に先立ち、オンライン版(9月14日付け)に掲載されました。

2015.09.10

プレスリリース 「貯蔵された記憶を可視化・消去する新技術を開発―記憶のメカニズム解明に前進」

東京大学大学院医学系研究科 附属疾患生命工学センター河西教授の研究グループは学習・記憶獲得に伴いスパインが新生・増大することに注目し、これらのスパインを特異的に標識し、尚且つ、青色光を照射することで標識されたスパインを小さくするプローブ(記憶プローブ)を開発しました。 この記憶プローブを導入したマウスでは、運動学習によって獲得された記憶が、大脳皮質への青色レーザーの照射で特異的に消去されました。 また、各々の神経細胞における記憶に関わるスパインの数を数えたところ、大脳皮質の比較的少数の細胞に密に形成されていることがわかり、記憶を担う大規模回路の存在が示唆されました。 こうして、スパインが真に記憶素子として使われている様子を可視化し、また操作する新技術を世界に先駆けて確立しました。
成果は、9月9日に国際科学誌「Nature」電子版に掲載されました。

2015.07.14

プレスリリース 「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」

東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは生きた脳の中の神経細胞におけるオートファジー
(自己自食)を観察する技術を世界で初めて開発し、アルツハイマー病態におけるオートファジーの新たな役割を解明しました。
成果は、7月14日に国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック・レポーツ)電子版に掲載されました。

2015.05.06
2015.04.06

Brain/MINDS: brain-mapping project in Japan
岡野栄之、宮脇敦史、笠井清登

2014.09.27